2013
    12.10

    走れメロス 

    ≪あらすじ≫
    メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
    メロスは短刀で、人間不信に陥った王から市を救うつもりだ。
    しかし捕縛されてしまった。

    王の孤独も理解できぬ愚か者は、極刑だ。
    メロスも命乞いなど決してしない。
    しかし唯一の家族である妹に、亭主を持たせてやりたかった。
    3日間に情けをもらえれば、結婚式をして帰って来られる。

    その申し出を、王は嘲笑した。
    「とんでもない嘘をいうわい。逃がした小鳥が帰ってくるというのか。」
    「そうです。帰ってくるのです。」

    メロスは言い張り、無二の友人であるセリヌンティウスを人質にしろと言った。自分が帰って来なかったら竹馬の友を絞め殺せと必死で頼んだ。
    それを聞いて王は残虐な気持ちで、そっとほくそえんだ。
    「はは。命が大事だったら遅れて来い。お前の心はわかっているぞ」


     走れメロス (新潮文庫)

     著者:太宰 治



    メロスは市で買った衣装や御馳走を持ち、一睡もせず急ぎに急いで村へ帰り、妹に言った。
    「市に用事を残してきた。またすぐ市に行かなければならぬ。明日おまえの結婚式を挙げる。早い方がよかろう。」
    メロスは仮眠をとってから、結婚式の準備を行い、可能な限り最高の結婚式をした。

    メロスは一生ここに居たいと思った。
    しかし我が身にムチ打ち、ついに出発を決意した。

    その前にメロスは妹に言わなければならない事があった。
    「もうお前には優しい亭主があるのだから決して寂しい事はない。お前の兄の、いちばん嫌いなものは、人を疑う事と、それから嘘を吐く事だ。お前も、それは知っているね」
    次にメロスは花婿の肩を叩いた。
    「私の家にも、宝といっては妹と羊だけだ。他に何もない。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になった事を誇ってくれ。」

    メロスは少し眠ってから出発する――つもりだったが寝過ごした!
    飛び起きたメロスは、雨の中を全力で走った。
    殺される為に走った。
    王の奸佞邪知を打ち破る為に走った。
    豪雨で荒れ狂う濁流の川を渡り、王の命令でメロスの命を狙う山賊を殴り倒し韋駄天、走った。
    しかしメロスの足は止まってしまった。
    もう走れない。
    メロスは限界だった。

    メロスは心の中で、セリヌンティウスに謝罪した。
    そのとき一口の水を飲み、正気に戻った。
    諦めるには、まだ猶予がある。

    メロスは正直者として死ぬ為に、黒い風のように走った。
    そして市に着いた時に、セリヌンティウスの弟子であるフィロストラトスが現れた。
    「もうダメでございます。もう無駄でございます。走るのは、やめてください。もう、あの方をお助けになる事はできません」
    そう言われてもメロスは走り続けるしかなかった。

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    ≪感想≫
    人間として、生きる上での妥協点は必ず存在しています。
    もし私がメロスなら、寝坊した時点で諦めていたかもしれません。もし市まで走ったとしても、フィロストラトスの言葉で心が挫けていたでしょう。
    私のような若輩者が、メロスやセリヌンティウスほどの水準を保てるとは思いません。
    しかし昨日よりも今日の方が胸を張って生きられるように努力したいですね。

    ちなみに王がいるシラクスの市と結婚式を挙げた村は39キロくらい離れていたそうです。
    39キロも走り、酒をたらふく飲んでから再び39キロも走る・・・拷問ですね。
    絶対に途中で吐いてると思います。

    そこまで頑張って走ったのも、全ては殺される為です。
    友と名誉を守る為に、命をかけられる人は滅多にいません。
    現代では、愚かだと笑われる思想です。
    それでも私は、メロスに憧れざるを得ません。

    メロスはセリヌンティウスの足にすがりつき、叫びました。
    「私を殴れ。ちからいっぱいにほおを殴れ。私は途中で一度、悪い夢をみた。きみがもし私を殴ってくれなかったら、私はきみと抱擁する資格さえないのだ。殴れ。」
    命を助けた相手に、こんな事を言えるなんて信じられません!!

    謝られる前に謝れ!
    感謝される前に感謝しろ!
    と言いますが、身代わりとはいえ、まさか命を助けた相手に「私を殴れ」という志には感動どころか恐怖すら感じます。

    一方のセリヌンティウスもメロスのほおを打った後、自分を責めました。
    「メロス、私を殴れ。同じくらい高く私のほおを殴れ。私はこの三日間、たった一度だけ、ちらときみを疑った。生まれて初めてきみを疑った。きみが私を殴ってくれなければ、私はきみと抱擁できない。」

    三日の間に、たった一度だけ疑った自分のほおを打てとか、おかしいでしょ!!
    疑って当たり前です!!

    それに私がセリヌンティウスなら、メロスのほおを打たずに、この言葉を言うでしょう。
    「お互い悪かったから、互いを許し合おう」と言うでしょう。
    しかしセリヌンティウスは違いました。

    お互いがダメだったから、それを咎め合い、より気高く強い男になろうという気概が感じられます。
    その熱い魂と誇り高い姿勢に、王と私も心動かされました。

    他にも多くの人も、心動かされたと思います。
    日本文学の最高傑作だと感じた本でした。
    <記事タイトル一覧><気に入った文章集>
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    物質を再構築する魔法。
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    <魔法使いの弟子>

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    <ロッキー>

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    そして呪いの根源を発見するも、そこでは苦しみながらも一所懸命に暮らしている人たちがいた。
    <もののけ姫>

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    そこに堅い絆で結ばれた海賊団がやってきた。
    <ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島>

    敵対する両家。その子供同士が恋に落ちる。
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    <ロミオxジュリエット>

    盗難事件を潜入捜査しているつもりだったが、犯人を尊敬し、犯人の妹に惚れ、カーレースの魅力にとりつかれ、犯人の逃走を手伝ってしまう。しかし、それは失恋を意味していた。
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