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    2017
    11.17

    絶歌 神戸連続児童殺傷事件

    Category: オススメの本
    「心象風景」ならぬ「心象生物」という言葉がもしあったなら、不完全で、貧弱で、醜態で、万人から忌み嫌われるナメクジは、間違いなく僕の「心象生物」だった。
    かれらの全身を覆う薄く透きとおった粘膜は、色素が薄く敏感な僕の皮膚を表し、落ち着きなくあちこちにキョロキョロ振れる挙動不審な彼らの触覚は、絶え間なく周囲の大人の顔色を窺う憶病な僕の眼とそっくりだ。

    とのことです。

     著:元少年A

    ≪あらすじ≫
    1997年6月28日
    僕は、僕でなくなった。

    少年A
    これが僕の代名詞となった。僕はもはや血の通ったひとりの人間ではなく、無機質な記号となった。
    僕の時間は、14才で止まったままだ。


    ≪感想≫
    まるで小説のように他人事として書かれているけど、ぜんぜん小説ではないし、まして謝罪でもない。
    どちらかといえば言い訳の類で、それも弁明というよりも、自己の正当化に感じられました。

    それの好きな歌や小説を引用し「まったくその通りである」みたいなことを書かれるとイラっとするは、別に本作に限った話ではなく、俺の狭量さに起因する心の動きですが、そんな些細なことにも配慮して書けよと言いたくなりました。
    事件が事件だけに、俺がナイーブになりすぎているのかもしれません。

    どこで道を間違えたんだろう。
    ボタンのかけ違いが、、、という記述があり、少年時代の無垢な行動なども語られています。

    そしてそんな温かな描写よりも、祖母の死について書かれているページは多く、その描写には生々しさを感じました。
    自分が確かにそこにいるような錯覚をするぐらい、丁寧な描写だったと思います。

    ナメクジの解剖について
    「命に触れる喜びを感じた。殺したかったのではない。自分を惹きつけてやまない命に、ただ触れてみたかった。」
    と書いていました。
    そういうことなんだろうなと思います。

    怖いな、と思ったところもありました。
    「眠っているように穏やかで綺麗な死に顔」とあうものを、僕は認めることができない。僕は誰より間近で死の匂いを嗅いできた。死の舌触りも知っている。死が穏やかで綺麗なはずがない。だからこそ死は愛おしい。」
    ……だそうです。
    誰かを殺す想像をしたことがある人、は結構いると思うのですが、その中で、本当に殺してしまった人、は少ないと思います。
    例えばチャンピオンになる夢を抱いてる人の言葉と、チャンピオンになった人の言葉では、聞いた時の心の響き方に違いがあります。
    それを実際に、人を殺したことのある人が、死の舌触りも知っている、と書くわけですから、その言葉に凄まじい重さを感じました。

    猫をぐちゃくちゃに殺しながら射精した話を読んで、俺は何を思えばいいのかわからんよ!

    というか本当に、猫を次々に殺して、それが楽しくて、やがて「人を殺してみたい」ってなるんだね。。。
    寝ても覚めても、もうそのことしか考えられなくなった。
    って書いてあったけど、本当にそういう人が存在していることが悲しいです。


    少年院から仮退院した後、民間のサポートチームの取り計らいで、父親と話す機会があったそうです。
    お父さんは、こんな風に話したと書いてありました。
    「なぁ、今すぐにとは言わへんけど、お前の気持ちが落ち着いたら、また家族みんなで一緒に暮らせへんやろか? 父さんも母さんも、どうしてもおまえのそばにおってやたいんよ。被害者の方たちのこと考えると、こんなこと言えた義理やないけど、おまえがちゃんと立ち直って、世の中に適応してやっていけるように、親として見守ってやりたいねん。考えてみてくれへんか?」
    これを泣かずに読むのは無理やろー!!
    それに対して彼は、こんな風に書いていました。
    「僕には分かっていた。父親の本心が。父親は僕が更生したことを信じきれず、心のどこかで、僕がひとりになると再び罪を犯すのではないかと恐れていた。」
    あのなぁ、、、
    親の気持ちを考えてやれよ、、、
    そんな悲しいこと言わないよ、、、
    読んでいて、どんどん悲しい気持ちになる本だよコレー!!

    そのあとのシーンで、この人が父親に、自分が生まれてごめんと、言ったシーンで胸が苦しくなりました。母親にも「僕は病気やねん。僕がこんな風になってもぉたんは、母さんのせいとちゃうねん。誰のせいでもないねん。せやから、母さんには自分を責めんとってほしい」とか言ってるシーンも、ジーンときました。
    この人にも、温かい血が流れていて、心というものがあるんだと、少しだけ安心できた気がしました。
    でも、そんなことはないんだなと思います。
    この人は、絶対に温かみのある人にはなれない。読んでいて、そう思ってしまいました。

    国語の授業で「この小説を通じて、作者は何を言いたいのでしょうか?」という問題があったかと思います。
    そして、この本を読んで感じたのは「どうだ? 俺は異常だろう? 俺はすごいだろう?」という自慢でした。
    子どもが怪我を見せびらかすのと同じように、人を殺したという罪を見せびらかしているように思います。
    それが、とても悲しいです。

    それでも、不況で仕事をクビになり、必死に再就職を目指した時、恥もプライドもかなぐり捨てて、とにかくやる気を伝えたと書いてありました。
    「残業は断りません」
    「仕事がない時でも、給料が出なくても会社に行って掃除でも何でもやります」
    「遅刻したらその場でクビにして下さい」

    ……残業って、断ってもええんか?
    その権利って、我々にもあるんか?
    あるなら是非とも更新したいんやけどー!!

    それはともかくとして、この就職の際に、少年院で取得した資格が役に立ったそうです、
    刑務所などでも資格が取れるそうですが、そういうのをちゃんとやって、社会に復帰するのは凄いことですね。
    でもこの人は、なるべく少年院で取得した資格に関わる仕事はしたくなかったそうなので、少年院で教えてくれた人への感謝とか、社会への奉仕みたいな気持ちはこれっぽっちもなかったのかもしれません。

    社会に適応できるのだと、他の誰でもない、自分自身に証明したかった。という風に書いてあったのも、そういう感覚からくるものだと思います。

    仕事に関しても
    「やると決めたら手を抜かず徹底的にやり切るのが僕の基本機能(ベーシックファンクション)だ。」
    と書いてありました。。。よくわからん。

    ランドセルについて、
    日本の平均思考を象徴するもので、異物を磨り潰すロードローラーのように感じられた。
    という話もありました。
    たしかに!
    そうだな思いましたね。
    僕は何の不思議もなくランドセルを背負い、高学年になる頃に嫌になって、肩掛けカバンに変えましたが、そこまで具体的には感じていませんでした。
    でも言われてみれば、そういうことが嫌だったのかもしれません。

    また「心の成長痛」という話がありました。
    たぶん使い古された表現なんだと思いますが、とても良い表現だと思います。
    人の心が成長するとき、痛みがあると思いますし、逆に心の痛みが、人を成長させるんだと思います。

    というか全体的に読むのつれーわー!!
    猫を殺した描写とか、もう、手が震えて本を落としそうになったわ!!
    メンタルに影響出るわコレ!!

    最後に彼が、頭の中で反芻し続けたこと問いと答えを引用して終わりたいと思います。

    「なぜ人を殺してはいけないのか?」

    「どうしていけないのかは、わかりません。でも絶対に、しないでください。もしやったらあなたが想像しているよりもずっと、かなた自身が苦しむことになるから」
    【click!】
    <気に入った文章集>
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